国語の読解についての相談があった際には、私は以下のような考え方でぜひ家庭学習をやってみて下さいと返信してきました。
中学生ともなれば、ここで述べる「親子で一緒に解く」という方法は取りづらいかもしれません。しかし、それでもここに述べるようなプロセスを経なければ、読解の力はなかなかつきません。ここに記すやり方そのままでなくてもイイです。ただ、読解ができるようになるというプロセスをご理解下さい。決してすぐに、いっぺんにできるようにならなくてもいいんです、少しずつで。
ここでは国語の読解の勉強方法についてのお話です。少し長いですがお付き合いください。
国語の読解の勉強で一番大切なのは、
なぜそういう答えになるのか?
を考えることです。
数学のように、繰り返し問題を解くことで解法を身につけたり、スピードアップする方法が国語には適用できません。国語では繰り返し同じ問題を解けば、答えを覚えてしまって勉強になりませんから。
もっとも数学などでも繰り返しやれば、子供が答えを覚えてしまうことがあるわけですが、数学では仮に答えを覚えていても「途中の式」をちゃんと書くことで、単なるマル暗記から逃れることが可能です。 しかし、国語は数学の途中の式にあたる部分のほとんどが頭の中にあるために、2回目、3回目の学習が単なる答えの暗記で終わってしまうわけです。
また、国語は復習と言っても、「何を復習するの?」という感じになってしまいがちで、たいていの場合はやりっぱなしになっているのが普通でしょう。そこで「読解の答えがなぜそういう答えになるのか?」という本来は頭の中にある答えを導き出した根拠や理由を表に出していく勉強がどうしても必要になります。
学校や塾の授業で、問題を解いて、解説を聞き、間違いを直したり、○をつけたりするだけでは子供の読解問題に対する力はつきません。なぜなら、
「なぜそういう答えになったのか?」
の根拠や理由が明確になっていないからです。 もし子供が国語の授業を聞いて、
「なぜそういう答えになったのか?」
を考えられるとすれば授業を受けただけでも、読解の力がつくでしょう。でもそれは子供が授業の中でそれをやっているのです。そこを勘違いすると、「あの子は元から頭がイイ」なんて結論になってしまう。
前置きが長くなりました。
ぜひ国語の勉強でやってほしいのは、
「親子で一緒に問題を解く」ということです。
やる問題は最後に問題集も紹介しますが、塾や学校のテキストなど今あるものを使ってください。ただし、できるだけ解説が詳しいものがいいです。また、解答解説の部分で、「○○だから、答えはエとなります」という以外に、「○○だから、イはダメ」などのなぜダメなのかの解説があれば最高です。
そういう詳しい解説のある問題集を親子で時間を計って解いていきます。この際の時間設定は、指定されている時間よりも若干長めにとるのがいいでしょう。20分の設定なら、30分くらいを目安に問題を解きます。時間を多めにとるのは、解答をする際の痕跡を残していってほしいからです。
問題を解く際に、選択肢については、消去法、つまり4つの選択肢があれば、まず2つを消して、残りの2つから選びます。その痕跡を必ず残すようにしてください。選択肢が5つあれば、3つを消して、残りの2つから選ぶ。
また、記述式については、抜き出しは当然本文から引っ張ってくるわけですが、それ以外の記述式の問題も基本的には本文中のどこを根拠にして記述式を書いたのかを線を引くなどして痕跡を残すようにしていきます。
入試問題には学校によってそれぞれ傾向があるわけですが、今回の親子で一緒に問題を解いていく問題は、選択肢の問題が比較的多い問題を「先ずは選ぶ」のがいいでしょう。
第一の目的は「なぜそういう答えになるのか?」を考えていくことですから。
そして、これらの考え方がしっかりしていれば、実は記述式の問題の正答率も上がってくるわけです。
ここまでが準備段階であとは親子で同じ問題を解きます。解きながら痕跡を残し、少し多めの時間で考えるだけ考える。このとき親も子供も解答は、決して見ないようにしてください。そして制限時間が終わったら、まだ解答は見ずに、親子で書いた解答を見せ合い、答えを照らし合わせていきます。
親子で同じ答えになっているものもあれば、違う答えになっているものもあるでしょう。 同じ答えのものも、違う答えのものも、どうしてその答えにしたかを親子で話し合っていきます。
「本文のここにこう書いてあるから、答えはこれなんじゃないかと思った。」
なんて話をするわけです。
また、選択肢の問題も、先に消した選択肢について、「この部分は本文中に書いていなかった」とか検討していくわけです。
そうやって、親子それぞれの解答をもとに、1つの解答を作っていくわけです。あるときは、親の意見を採用する場面もあり、あるときは、子供の意見を尊重して子供の解答を採用する場面も出てくるはずです。
親は子供の意見を聞いて、子供は親の根拠を聞く。
「いやいや、そうじゃないよ!お母さん!」
なんていう意見を子供が親にぶつけるようなら、すばらしい!
そこまでやった上で、いよいよ解答を見て答えあわせをしていくわけです。
ここまでに親子で特に答えが違っている問題については、意見を交換し合い、1つの解答に集約しました。それが実際に合っているかどうかを答えあわせするわけです。
親子で力を合わせて満点が取れれば言うことはないですが、そうでない場合もあるでしょう。それを解答解説を見ながら、やっていきます。
解答解説ができるだけ詳しいものを選んでほしいと最初に言ったのは、答えあわせをする際に、親子でお互いに検討しあった内容が合っているのかどうかを検証するためです。
なぜ答えがイなのか。なぜエではダメなのか。
また記述式は解答解説の模範解答と書き方が違ったりもしているはずです。入試や模試では採点の際に、○をつけるためのキーワードになるものを設定している場合がほとんどです。記述式はそれらキーワードが入っているかどうかを確かめます。家庭で答え合わせをする場合、正確な判定が難しいこともありますが、その場合は親が大人の判断として、イイか悪いかを判断してください。
子供の解答、親の解答、検討しあった親子の解答、この3つを使って、解答解説を見て、 採点していきます。
得点が悪くても気にしないことです。
解答解説に書いてあることと親子で検討した内容はどうであったか。
自分たち親子が導き出した答えはイイ考え方をしていたのか、それとも検討ハズレのことをしていたのか。
それらを解答解説で確認していきます。
親子で解答が一致していたものでも、解答は違っていたということもあるはずです。そうであれば、何に引っかかっているのかを検証する。
「そうか!ここに答えの根拠があったのか!」なんてお互いに言い合うわけです。
問題は、採点する前に、「なぜそういう答えを書いたのか?」の根拠や理由を検討しあい、お互いに意見を述べ合うことが大事なのです。
これが国語の勉強でもっとも大切なことであり、数学で言えば、途中の式をちゃんと書くことになります。その際、親が思った根拠や理由だけでなく、子供にも意見を述べさすようにするのは言うまでもありません。
なにはともあれ、実際に1問でも2問でもやってみてください。根拠や理由という言葉を何度も使いました。
お気づきになったと思いますが、そう、根拠や理由は必ず本文中にあるのです。自分の考えを問われているのは、自分の意見を書く問題だけです。それ以外はすべて答えの根拠になるものは本文中にあります。
国語は、答えは必ず本文になり!といわれる所以です。先ずは一度お試し下さい。
実際家庭で親子にやってもらった結果、
◆子供が答えの根拠や理由を考えるようになった
◆親が子供に点数で負けて子供がノリノリになった
など、いろいろとイイ面も出ていたことが確認できました。
お母さんが無理そうなら、お父さんに出番をお願いしてもいいかもしれません。
実際のテストでは、これらの判断を瞬時にやっていく必要があり、時間という制限とも戦っていく必要がありますから、さらにステップアップをしていく必要があるわけですが、国語の勉強をどうしたらいいのか?については、この過程をやっていくことで国語の力は、特に読解については、力がついていきます。
たまたまテストの点数が良かったというのは、受験という緻密な戦いにおいては致命的です。ぜひ今頭の中でやっている答えを導き出す前の過程をこのやり方で引き出してやってください。
別項で紹介した問題集はいずれも解答解説が詳しく、私がいつも使っている問題集です。